柳晴さん
まんが表現学科 Webアニメ・コミックコース 4年
大阪府 好文学園女子高等学校出身
まんが家
- 編集部
- 神戸芸工大に入学して良かった点は?
- 柳晴
- 1、2年生のうちに、まんがに特化した内容の講義やデジタルでイラストを描く際の基本など、まんがや絵に関する基礎的な知識を学べることです。私は昔から絵を描くのが好きで、高校の時からまんがを描き始めましたが、当時は紙原稿だったので、ゆくゆくはデジタルで描く技術を身に付ける必要があるなと感じていました。神戸芸工大のオープンキャンパスに参加した時、先生に自分の絵を見てもらえる機会があり、制作作業中の在学生の方々と一緒にその場で絵を描いて見せたら褒めていただけたのと同時に、こういう絵を描くならデジタルではこういう色を使うといい、といったアドバイスをいただけたのも印象的でした。
- 編集部
- 神戸芸工大の先生は、どんな感じの方々ですか?
- 柳晴
- 大学の先生といえば気難しそうなイメージでしたが、神戸芸工大の先生はとてもフレンドリーでフットワークが軽い方々が多いです。悩んでいることがあればなんでも聞きやすいし相談しにいきやすく、作品制作において自分では「なにか違うな」とぼんやり感じていることを明確化して返してくださいます。学生一人ひとりや作品ときちんと向き合ってくださっていると感じます。
- 編集部
- 1、2年生に受けた授業で、特に役に立ったものは?
- 柳晴
- まんがのストーリー構成の考え方や、コマの置き方、セリフの長さや配置、視線誘導の仕方といった基礎を1年生の時から教えていただけたことは大きかったです。それは3年生で実習が始まってからさらに強く感じました。まんがというのはまず読みやすさが重要で、ぱっと見でセリフ量が多すぎたり視線誘導が上手くいってなかったりすると、まず読んでもらえない。せっかくおもしろい物語が描けているのに、そもそも読んでもらえないと意味がないので、基礎の大切さは後になって強く感じました。
- 編集部
- デジタルで描くということに関しては、すぐに慣れましたか?
- 柳晴
- 最初はとても戸惑いました。紙になら思った通りの絵が描けるのに、iPadだと上手くいかないのがストレスで、一旦デジタルで描くことをあきらめたほどです(笑)。私には一生無理だなと思っていたのですが、避けるのをやめてiPadを使い続けてみればようやく慣れることができて、今ではまんが制作の作業をすべてデジタルでおこなうようになりました。ただ、やはりトーンの濃さが紙原稿とデジタルでは違ったり、デジタルでは線がきれいなのに印刷してみたら違った感じになったり、まだまだ試行錯誤の毎日です。
- 編集部
- 他に大学での経験で、印象に残っていることは?
- 柳晴
- まんが制作の途中段階でお互いに見せ合って意見を言い合うグループワークが一番印象に残っています。まずプロットを作ってそれをメンバーみんなに見てもらい、ここがよくわからないとか、もっとこうした方がいいんじゃないかとか、意見交換をし合いながら進めていきます。その分修正や作業量が増え、体力的にはかなりしんどかったですが、他の学生たちや先生と意見をぶつけ合うことで、自分では思いつかなかった設定や展開が盛り込まれ、物語の幅が広がりました。制作で悩んでいる時や行き詰まった時は、誰かに見てもらって感想を聞き意見をもらうのがいいと、グループワークを通じて感じることができ、自身の成長に繋がりました。
- 編集部
- 実際にその成長が感じられたのは、どういう時ですか?
- 柳晴
- そのグループワークで「祝福」というまんがを描いたのですが、今までは恋愛ものなど明るい物語を描くことが多かったのを、逆に暗い物語に振った作品となりました。いつもとは違うテイストの作品だったので、ストーリーをまとめるのに苦労しましたが、友人や教授の意見を参考にしながら制作を進めていきました。この作品を学外の出版社の編集者さんに見ていただいた時、ハッピーエンドを描いてみてほしいと言われて描いたのが「クピドの贋物」です。
- 編集部
- 「クピドの贋物」の制作で難しかった点は?
- 柳晴
- 最初はどのようにハッピーエンドに向かえばいいかわからず、展開に悩みました。そんな時、あるアニメを見ていてキャラクターが必死に戦う姿に刺激をもらいました。それまで私が描くまんがの主人公は受動的なタイプだったのですが、運命にあらがう姿を描こうと思い、物語を組み立て直して、なんとかハッピーエンドに導くことができました。自分自身はバッドエンドしか描けないと思っていましたが、挑戦すればハッピーエンドも描けるし、表現の幅が広がったと実感できました。
- 編集部
- そういう時も、他の方々の意見が参考に?
- 柳晴
- 友人と話しているうちに新たな設定を思いつくこともありましたし、先生と意見が合わなかった時も納得いくまでディスカッションに付き合っていただき方向性を定められました。先生は本当にたくさんのメディア作品を見てインプットしているので、「こんな風にしたらどう?」と提案してくださる引き出しがとても多いです。
- 編集部
- 先ほども話に上がった出版社の担当編集者について、出会いはどのような?
- 柳晴
- 3年生の冬に「コミティア」という全国的なイベントで創作まんがを発行した時、各出版社の出張編集部のブースがあって、自由に原稿を持ち込むことができたんです。編集部やまんが雑誌によって掲載される作品傾向が違っているので、いろんな編集部の方々に作品を見ていただけるのはありがたいし、さまざまな意見が聞けるのも私にとっては利点でした。
- 編集部
- その時にご自身の作品も見ていただいたのですか?
- 柳晴
- 私も自分の作品を出張編集部に持ち込み、そこで評価をしていただいたのが担当編集者さんとの出会いでした。担当さんが私の作品「祝福」を賞に出してみる?とおっしゃってくださって、出してみたら受賞できたり、ボツになった作品が掲載会議で通って掲載されたりと、まんが家としての第一歩を踏み出すことができました。
- 編集部
- 最初からまんが家を志望していらっしゃったのですか?
- 柳晴
- 自分ではまんが家になろうとは思ってなくて、一旦は企業への就職を考え就活もしていました。でも就活とまんが制作を同時進行することができず、やはり自分は絵やまんがを描くことが好きだ、まんが家になろう、と決心することができました。
- 編集部
- では、最後に高校生や受験生へのメッセージをお願いします。
- 柳晴
- 今は進路選択や受験勉強などで大変な時期かと思います。勉学はまんがや絵を描くことには関係ないと思っていても、実際は活かされる場面も多いです。いろんな知識があれば、それだけ描ける物語が広がるからです。自身を追い込むだけではなく息抜きも大事なので、適度な休息をとりつつ目標に向かって頑張ってください。
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