インタビュー

2019.07.30

生産・工芸デザイン学科

「アーティストとして生きていく」
神戸芸工大というフィールドで、
高校からの夢が実現!

※学科・コース名称・学年はインタビュー当時のものです。

河口 晴季(空箱職人 はるきる)さん

アート・クラフト学科 フィギュア・彫刻コース 4年

名古屋市立工芸高等学校出身

編集部
SNSを利用している学生作家は多いですが、はるきるさんは最初から注目を浴びていたのですか?
河口
いいえ、初期はまったく。「ペーパークラフト」というジャンルは決めていましたが、実際どうすれば多くの人に興味を持ってもらえるかわからず試行錯誤していました。作品内部にライトを入れて光らせるとか、紙でつくったフィギュアの全関節が動くようにするとか。思いついたことはとりあえず試していました。
編集部
その試行錯誤の末に、「空き箱」という素材に出会った?
河口
僕は作品を紙でつくることにこだわっていて、ある時ふと「空き箱も紙だな」って気づいたんです。その時たまたま手にしていたアルフォートミニチョコレートの空き箱でつくった作品をTwitterにあげたら、これがなかなかにバズりまして。そこからさらにお菓子やティッシュの空き箱などで何点か作ってみて、プリングルズが大当たりしたときに「よしっ、空き箱でやっていこう!」と決めました。
「空箱職人はるきる」としてTwitterで投稿した「空箱アート」の作品。
編集部
空き箱を使った作品は、発表のたびに注目を集めていますね。
はるきるさんにとって空き箱との出会いは、人生を左右するほどの重要性があったのですね。
河口
僕は高校の時から「アーティストとして〝やっていく〟」という夢を持っていました。それはつまり、「アーティストを職業にして食べていく」ということ。そのために中途半端な作品ではなく、オリジナリティがあって、多くの人に興味を抱いてもらうことが必要でした。空き箱を利用した作品は、その両方が叶えられます。空き箱の価値に気づけて本当に良かったと思っています。
編集部
進路先に神戸芸工大を選んだのはなぜですか?
河口
高校で進路を考えているときに、神戸芸工大生の作品を見て「ここなら自由に作れそうだ」と感じたからです。オープンキャンパスで先輩の話を直接聞き、「自分のやりたいことに全力を投じられる環境が揃っている」と思えたことも決め手のひとつ。僕は大学でアートクラフトをやると決めていて、それを叶える条件が神戸芸工大に揃っていたんです。実際、個性を伸ばすのに最善の環境でした。
編集部
Twitterを活動フィールドとするうえで、主に意識していることは?
河口
更新頻度です。たとえば半年に1個とか、3ヶ月に1個なんてペースで作品をあげていたら、完全に忘れ去られると思うんです。SNSで活動していくなら、「定期的にあげていくスピード」が大事だと思っています。そのためにも「短い時間で効率よく制作する方法」を常に模索している状況です。この意識は普段の授業でも役立っていて、僕は課題に追われたことがありません(笑)。
編集部
空箱職人として、作品づくりで心がけていることはありますか?
河口
「誰でも知っている箱を使う。」です。僕の作品を見た方々に、「この箱知ってる! あの箱がこうなるの!?」という驚きを感じて欲しいので。だから箱を選ぶときは、コンビニやスーパーを中心に探しにいくようにしています。それから設計図もつくりません。つくり始める前にだいたいの完成形をイメージして、それに従ってハサミを入れていく感じ。〝箱〟を見たときのインスピレーションを大切にしてつくっています。
編集部
今年のゴールデン・ウィークに初の個展を開かれたそうですね。感想を教えてもらえますか?
河口
まずシンプルに感じたのが「SNSの拡散力と集客力はすごいな」ってこと。Twitterではどういう人が僕の作品を見てくれているかわからなかったので、とても良い機会になりました。子連れの方が多くて、「僕の作品って親が子どもに見せたいものなんだな」と発見できたのもとても嬉しかったです。次の個展を計画していて、すでに作品づくりや会場選びに動き始めています。
編集部
作家を目指している後輩たちにアドバイスをお願いします!
河口
いまはアーティストにとって、ものすごくいい時代だと思っています。僕が10年前に大学生だったら、絶対にここまでになっていない(笑)。個人が発信する能力が簡単に手に入る時代なので、人の心を動かすことのできる作品さえつくれたら、いくらでもチャンスのある時代です。どんどん挑戦してください。
編集部
はるきるさんにとってのアートクラフトは、「人生をかけるに値するもの」。大学生としての4年間は、自分らしい作品を模索し、その制作に没頭できる貴重な時間となったようです。学生一人ひとりの創作活動を応援する神戸芸工大も、彼の活躍を見守り続けてきました。さらにパワーアップするであろう次の個展も楽しみです。